あ・はるふ・まんすりー・こめんと 1999年3月10日

 
  いきなり、脳死です

 近頃トピック・ニュースといえば、もっぱら脳死移植ですね。
 日本初の試みで、三月十日現在、臓器提供を受けた方の快復も順調らしく、めでたいこと。こうして多くの命が助かるなら、すばらしい。
 けれど、それでも僕は思うのです。
 脳死は人の死ではない、と。
 これは数年前僕が実際に脳死患者をたびたび見舞った経験から言うのです。たしかにその人は「死んだも同然」で、生きてれば普通できることができませんでした。呼吸すら機械に頼ってるありさまです。
 それでも、その人はまだ生きていました。だから、僕はそこで多くの歌を詠めたのです。(それは五月に出す本に入れるつもりです).。
 僕にはこの問題には論理の転倒があるとしかどうしても思えません。
 つまり「今の法秩序では、脳死が死でないと、臓器提供者を殺すことになるから、移植手術ができない。だから脳死は死なのだ」 この主張は、どこかの国でワニを守るため、魚類保護の法律を強引にあてはめたというエピソードを想い出させてくれます。ワニを保護したいから、ワニは魚だというわけです。
 ワニを魚だと言いくるめるのは、苦肉の策、まだ微笑ましい部類でしょう。
 しかし、脳死を死とするのは、命の問題、生死の問題と絡み、笑ってすませられない話だと思います。
 どうしてワニを魚だとせず、ワニを保護する為の法律ができないのでしょう。どうして脳死を死とせず臓器移植法が成立しないのでしよう。
 そこでは、法の精神が根本的に歪んでしまっているのでは、あるいは、現実とうまく対応できていないのでは、と僕は危ぶむのです。一人の人間として。
 もちろん、これから移植手術が定着することそのものは、善い事なのでしょうけど。

 

 

  テレビドラマ

 ところで、NHKドラマ「チョコレート革命」は見られましたか。BSの再放送だから、今さらって気もしますが。
 これは同題の歌集が原作らしいので、興味はあったんですよ。僕はあまりテレビつけないから、最初から見るつもりはなかったけど。主人公の配役は収録歌「葉月里緒菜になれぬ多数の側にいて」うんぬんからきた起用でしょうが、こういう遊び心は好きですね。ドラマにこの歌を詠むシーンがあれば、ぞんぷんに笑ってあげた。:原作者は配役教えられた時点で撮影中止を申し入れたくならなかったのかな。それに人から聞かされたところでは、人物設定は歌集とはまるで違うらしく、これじゃタイトルを頂いただけじゃないのか、と思わないでもなかった。
 でも、実際のところはどうだったのでしょう。
 ともかく、テレビ映像について考えさせられる出来事でした。子供の頃は背伸びしてドラマも見たけど、もう短歌がらみでも気にしないから、こういうことがないと考えない。いつだったか、川田順の晩年を描いた作品があったけど、結局放っておいた。
 歌人が出てくると、僕は昔からなんかしらけます。いつだったか日曜大河ドラマの奥州藤原氏の話で、あまりにもかっこよすぎる西行が現われ、こちらが恥ずかしくなった。
 おもしろかったといえば、岩下志麻が法条政子に扮した物語で、作中ときおり顔を見せていた藤原定家ぐらい。あそこまで戯画化されると笑える。
 もっとも、この番組にも、赤面物の源実朝がいた。僕は今でも篠田三朗という俳優が苦手なのです。この実朝と、中原中也のせいです。(彼が中也を演じたのは、たしか日曜劇場だったよな・・・)。
 なんにせよ、今は昔だ。

 

 
  文豪逝去

 本年二月、文豪が逝去されました。享年九歳。大往生でしょう。あとを追うように、洗濯機、目覚まし時計、置き炬燵までが逝きました。皆、長寿を誇っておりましたが。
 文豪はワード・プロセッサー。略して、ワープロ。わが愛機として幾万枚の原稿を打ち出し、最後にはキーと文字入力が一致せず、印刷も行頭がその差十センチ以上の不揃いと、惨憺たる状態でしたが、これほどの活動ができたのだから、彼も本望ではないでしょうか。
 ところで、パソコン購入者の一体何割がハードとしてのワープロを持っていらっしゃるのでしょうね。ちなみに、僕は今新しいのを買おうか、EGWordsソフトにしようかと悩んでいるところです。(ちなみに、この文章は「ことえり」です)。
 それにしても、文豪。すごい名前だ。この商品の名付け親は誰なのかね。

 

 
  新風選書に参加

 さて、しばらく著書を出さないからか、最近「生きてますか」なる便りまで頂くようになりましたが、もちろんまだ死んでませんよ。
 その証拠に、新刊も出します。新風選書の一冊で。
 刊行は五月末頃の予定だったのですが、なぜか遅れて六月中旬になるとか。
 ほかにも、雑誌連載とかありますが、それはまた次回にでも。

 

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