あ・はるふ・まんすりー・こめんと 1999年8月13日

 
  交通事故

 「ねえ、書店に自分の本があるって、どんな感じ?」
 こういう質問をするのは、昔の知人です。ひさしぶりに会うと、誰もが口にする。それで僕は困るのです。
 第一作でいきなりペストセラーになった人だとずいぶん違うのでしょうが、僕の著作は本屋に置いてないことだって珍しくもなんともないので、普段「注文取り寄せして」と言ってるから、本屋に並んでいるのを覗きに行った時はともかく、なんとなく買い物に寄って見かけたりすると、気分はほとんど交通事故です。始めての時は、たぶん真っ赤になったと思う。慌てて店を飛び出したね。恥ずかしいったらない。そりゃ嬉しいには違いないけど。
 それで、いまだに慣れません。どこの小さな本屋に入っても常置なんて状態を一度でも経験すれば、自然に身に付くのかもしれない、でも、そんなことは当分(あるいは永遠に)なさそうだから、見つけるたびにUターンして店を脱出することの繰り返し。本当は感謝して、何か買うぺきなのでしょうね。
 だからさっきの質問の正直な答えは、
 「穴があったら入りたい気分」
 なのですが、そう言っても、あまりわかってもらえません。だから近頃はお茶を濁したようなおざなりのセリフになりがち。いやだねえ。

 

 
  神戸の甘い話

 先日、オルセー美術館に行ったのだけど、これがうっかり神戸祭り当日で、大変な人出。失敗したなあ、と思ったけど、あとの祭り。
 今回来たのは、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン(パンフレットによればゴーガンだそうな)、モネ、マネ、ドガ、ゴッホ、ロダン、ムンク等、作者の知名度は一級だし、押すな押すなの盛況になるのもしかたないか。有名な古典並べるとやっぱり客が来るね。以前、滋賀のポップアート展に行ったら、静かなもので、ウォーホルもJ・ジョーンズも知られてないんだなあと改めて思った。僕みたいな素人でも知ってるのに。現代物に客が少ないのは、ここの業界も一緒らしい。(ポップアートが現代物にあてはまるかは微妙ですか)。じゃあ自分がどれほど現代美術に金使ってるかというと、やっぱり使ってない。(エンゲル係数が高すぎるせいもある)。小さな画廊のぞくのは只だし。部屋にヒロ・ヤマガタやラッセンのチラシや切り抜きは相当あるだろうけど、壁の飾りにすらしてない。江戸期、葛飾北斎や安藤広重を茶碗の包み紙にしていたのを想い出す。ああ、贅沢。でも、その気にならないのだからしかたない。そのオルセー展でも一番しげしげ眺めてたのは、スティーアの「浜辺の若い女性」だったりして、甘い奴、と自分を嗤った。ほんと、甘い。
 帰りは、中華街で肉まん食べて、コスモポリタンで休んだ。西洋女性が店内狭しと動いてたので、この人がチョコ業界の偉人モロゾフの子孫なのかなと思いながら、チョコフロートを飲んだ。やっぱり甘かった。そういや昔誰かが言ってたけど、モロゾフってメーカーは名称権利を買い取ったんだってね。でも、あそこのプリンはおいしい。

 

 
  
なに言ってやがる

 某新聞社が勧誘に来て、
 「ほんとはこんなことしちゃいけないんだけど」
 と言いながら、特典を並べた、あきれるほど。おもしろいから、どこまで出すか黙って聞いた。「絶対内緒」をあまり繰り返すから、社に黙って自費でやってるんじゃないかとすら思えてくる。内緒と言ったって、あちこち喋り歩いてるんだろうに。
 なかなか口の上手な人で、お世辞の起動掃射、集中攻撃。近頃あまり言われないから、心地よく聞き、
 「もっと裕福になったら、主要紙全部買ってあげるよ」
 と冗談をとばしたら、
 「なに言ってやがる」
 と返された。まあ、そりゃそうだ。
 しかし、開口一番、「お昼寝中すみません」はないだろう。暑い中、冷房もいれず、集合住宅で机に向かっている奴もいるんだよ。

 

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