あ・はるふ・まんすりー・こめんと 1999年10月8日

 
  百と六十

 旅立つときは大抵ふと思いついたようにふらりと出るのですが、今回は別。その数日前、茨城県東海村原子力施設が臨界事故で放射線漏れを起こし、現場十キロ四方外出禁止等、大騒ぎになっていたので、一応目的地と事故現場の距離を地図でたしかめ、約六十キロと測定、ちなみに福島県は最短五十キロで栃木県は最短三十キロ以下とか、それならと予定通り出発しました。東京までがだいたい百キロだから全然気にする必要なかったのですが、同県内というだけで、近いような気になるのです。友人の中にも出かける直前までテレビを眺め安全を確信してから来た者もおりました。
 その日はもちろん事故の話題がちらほら。農家の方は特に怒ってらっしゃいましたが、汚染を恐れてか、その後やっぱり野菜は売れないようですね。無理もないけど。
 原子力以外の発電開発に政府予算をもっと回せないのかな。いつまでもこんな調子じゃたまらないし。

 

 
  不毛なコンピューター

 さて、その日某大学助手氏を訪ねたら、部屋のコンピューターを情報検索システムにつなげて僕の著書の図書館所蔵状況を調べようと提案され、(嫌だってのに)、すっかり遊ばれてしまったのですが、結果はため息物でした。
 表示された数館のひとつが、BLつまり大英図書館だったりするのです。現実的問題として僕の本を借りたいと日本からBLに依頼する人がいるとはとても思えません。そりゃあ日本ではどこにも置いていないというならしかたないけれど、僕がときおり寄る公共図書館にはたいてい配架されているわけですよ。では何故これが検索されないのかというと、総ての資料をネット公開する義務はないからですね。全部載せるのは大変だし。だから持っているのに日本の公立図書館は画面に出ず、大英図書館が表われるのです。
 今更ではありますが、やっぱりコンピューターって便利になったようで、恐ろしく不毛な情報も流しているんですよね。
 まあ、僕としては借りず書店に注文してくれた方が嬉しいけれど。
 いつだったか、チャンバワンバというポップグループが「おれたちのCD買う金ないなら盗ってくれていいぜ」とカッコよく書かれてた。僕はきっとカッコわるく生きるんだ。

 

 
  
図書館の村上春樹

 ところで、図書館では作家について書店とはずいぶん異なる評価をしている例があります。
 たとえば、小説家の村上春樹氏などは図書館司書泣かせでしばしば取り上げられます。理由をいくつか箇条書きにしてみましょう。
 1. 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で実体と懸け離れた図書館を描いている。
 同様の理由で宮崎駿映画「耳をすませば」が槍玉に挙がったことがありました。そもそも作家ってあんまり実体に添った描写をしようなんて考えないから、文句言ってたら切りないんですがね。でも、利用者に電話で「鈴木ですけど先週の『週間読売』三時までに持って来て」などと言われると「うちはピザ屋じゃない」と叫びたくなる司書の嘆きもわかります。こういう風潮がこの作品の責任とは限りませんが。そういや、たしかに小説中に、そういうシーンあったよな。
 2. 図書館をホラーの舞台にした。
 たぶん「図書館綺譚」のことでしょうが、佳品だと僕は思います。でも、あまり良い印象を抱いていない司書もいるようです。
 3. <デレク・ハートフィールド>を調べるのに数時間を要した司書が続出。
 「風の歌を聴け」に登場する架空の小説家ですが、実在の人物と信じ検索を頼む来館者が時折いるそうです。何度となく聞かされた笑い話ですが、当人にとっては最悪の体験だとか。依頼者はがっかり、司書は消沈。お疲れさま。
 4. 本がよく盗難にあう。
 「ノルウェイの森」などは十冊すべて盗られた所もあったとか。愛読者のモラルまで作家のせいにされちゃたまりませんがね。村上氏が「盗ってくれていいぜ」と言うのかどうか。「他の人のにしろよな」とか。

 

 
  秋

 十月になると、いきなり最高気温が七度ほども下がり、今年はどうやら厚手の半袖も薄手の長袖もほとんど出番なさそうです。
 なんか物足りないなあ。

 屋外はもうコスモスでいっぱいだよ。

 

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