甲州街道にて
朝からベランダの前を警官が往ったり来たりしている。普段なら気味が悪いが、今日は理由がわかっている。香淳皇后の「斂葬の儀」、つまり本葬。それでも、警官の存在は気持ち良いものではない。だから昼過ぎ散歩に出た。 甲州街道を西へ。約五メートルおきに警備が就いている。豊島岡墓地にて告別式に当たる「葬場殿の儀」が午前中で終わっているはずだから、そこから埋葬の「陵所の儀」を行う武蔵野東陵まで、当分このあたりは交通規制をひかれる定め。カメラやビデオ映写機を構えたり、見物も多い。歩道と車道の間にロープが張られているから横断歩道を渡れず待つだけの人も。それでも、誰も文句は言わない。 武蔵陵入り口に着くと、オーケストラが知らない曲を生演奏していた。もう行き止まり。元来た道を引き返すしかないかと思っていたら、白バイそして黒バイに先導された、車、車、バス、車。陵墓にまでずいぶん同行者がいるんだなあ、と思っていたら、規制は解かれた。たちまち散る人の群れ。予想されたことではあるけれど、頭にも耳にもなんの歌句も聞こえてこないので、そのまま毎日のように寄るスーパーマーケットまで歩いた。 昭和天皇死去のニュースを聞いた時は、すぐ歌ができたのに、毎回そううまくいくものでもないんだな、やっぱり。 翌日の夕方、そのスーパーマーケットからの帰り、また交通規制がひかれていた。往きも白バイと警官の数はやっぱり尋常ではなかったから、これも予想できたこと。もっともその日はロープも少なく、警官が赤信号の前に立ち、車の列が通り過ぎたら、その連絡で青信号に変わる。 「また陵まで行かれてるのよ」 おばさんが数名、信号を待ちながら話していた。なるほど、首都とはこういうものか、と思った。
<附> この項、次回「あ・はるふ・まんすりー・こめんと 35」に続く。
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