あ・はるふ・まんすりー・こめんと 2001年6月10日

 
  DVD「ウッドストック・増補版」鑑賞

 六十年代に興味がある。
 六十年代に社会が一変したと多くの人が言う。でも、僕はその時代を知らない。現代を理解するためにも、いろいろ六十年代に関する物を吸収してきた。九十年代にもなってから。もちろん、触れてみると、気持好いので、というのが第一の理由だけど。
 先日、DVD化された映画「ウッドストック」を借りて来た。
 これは1969年に行なわれたウッドストック・フェスティバルという野外コンサートのドキュメンタリーで、漫画のスヌーピーの友達とは何の関係もない(はずだ)。オリジナルに、ジャニス・ジョプリン等を加えたから、なんと220分以上の長編で、二度も繰り替えし観ると、さすがに疲れた。それでも、ニール・ヤングの唄っている映像はない。メンバーの一人だったCRS&Yの曲が冒頭と最後を飾っていても。CR&Sの三人はしっかり出ているのにさ。
 待て。
 すると、七時間半も観ていたのか。
 疲れるはずだ。
 出演ミュージシャンは、他に、ジミ・ヘンドリクス、ザ・フー、サンタナ、スライ&ザ・ファミリーストーン、ジョーン・バエズ等、ビートルズやボブ・ディラン&ザ・バンドやローリング・ストーンズといった六十年代の主役の周辺に位置する、うってつけの顔ぶれ、などと書いたけど、実は半分以上は、まだ十年も前じゃないと思うけど、最近はCDショップでさっばり見かけなくなったこのオリジナル・サウンド・トラック・アルバムを聴いた時、初めて知った。いまだにその収録曲しか知らないシンガーも数名。ジェファーソン・エアプレインはスターシップの前身、と教わっても、ふうん、としか言えない。スターシップ、そんなの居たなあ。彼等のも改めて追加された映像らしいけど、CD収録の「ヴォランティアーズ」じゃないのは、唄が時代がかりすぎているという判断だろうか。
 映画を観て良かったと思うのは、CDを聴いた時さっぱりわからなかった時代に与えた衝撃をようやく少しは理解できたから。サントラだけじゃその音楽の質のすばらしさは味わえても、何故このコンサートがこれほど有名なのか、伝説的な出来事なのかは見当もつかない。
 それはビートルズやボブ・ディランの作品をきっかけに人々が感じた夢なのだろう。
 その時代を呼吸していない僕らには、その夢はかなり妙な物として映る。僕のようにビートルズもディランも好きな奴が観ても、そうなのだ。新進シンガーにしか興味のない人には、ナンセンスにしか思えないのじゃなかろうか。
 たとえば、映画にはLSDという幻覚剤の話が繰り返し取り上げられている。十九世紀後半のフランス詩人達にアシッシュや阿片等の麻薬が流行ったことに興味を持ったディランが、ビートルズに教え、そこから一気にロック界に広まったらしい。フランス近代詩の祖とも言われるボードレールは麻薬の不要を説き、ディランは「まずったなあ」と悔い、ビートルズの面々はテレビで吸わないよう発言した。もちろん、彼等は麻薬の害に染まることはなかったが、ジミ・ヘンやジョプリン達の急死は麻薬が原因というのが通説だ。傷ましい。
 後発世代は往々にして先人の一部を純粋培養した作を生み出す。偉大な先人の総てを理解することなどできやしないから、自分が理解できる範囲で解釈した思考をフル回転した結果、およそ違う物を造ってしまう。大抵は、より底の浅い物を。
 文学でも、偉大な文豪の後、小粒な秀才・奇才が輩出するのは、その辺りに原因があるんじゃないかな。
 真の偉人の世界はもっとでかい。善くも、悪くも。
 でも、ジミ・ヘンドリクスも、ジョプリンも、その音楽は本当に美しいんだな、これが。
 もう一本、それと同時に、ビートルズのアニメ映画「イエロー・サブマリン」も観たんだけど、これこそがその夢物語。ビートルズの夢。Nothing is real. だからそのぶん今でもおもしろいんだ。きっと。

 

  ジョン・レノンって

 日本ではビートルズの四人のうちジョン・レノンの人気が異様に高いけど、これはジョンが日本女性と再婚後何度も来日して親交を深めたこと、「イマジン」「平和を我等に」等のソロ時代のヒット曲で「愛と平和の使者」のイメージが定着しちゃったこと、そして何よりもう一人の重要なメンバー、ポール・マッカートニーがジョンが死んだ年に日本でマリファナ所持で逮捕されて以来すっかり名を下げちゃったからでもあるんだろうなあ。
 逆に、アメリカでポール人気が高いのは、ジョンがニューヨークで射殺されたせいもあるんだろう。あの事件はアメリカの汚点だし。
 埼玉にレノン博物館ができちゃったから、これでより一層両国での人気は片寄ったりして。
 作品と関係ないところでこういう評価が固まるのって嫌だね。曲そのものなら、「イエスタディ」「レット・イット・ビー」等、ポール作が他の三人を圧倒しているのに。
 僕はもちろんジョン・レノン大好きだけど、「イン・マイ・ライフ」なんかはともかく「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「ア・ディ・イン・ザ・ライフ」みたいな超後ろ向きソングを聴いてると、<misunderstanding all you see(君が見ているのはすべて誤解)>なんてジョンがせせら笑ってる気もしないではないんだな。

 

 
  誘惑の十代

 ところで日本で薬を理由に逮捕されるのは、井上陽水、長淵剛、最近では槙原敬之と、ミュージシャンばかりなのはどうしてだろう。それほどアバウトなのかな、彼等の性格が。
 今はもう潰れたらしいけど、十代の頃「あそこへ行けば手に入るらしい」とか、僕にさえそういう誘いは絶えずあって、行かなかったのは、薬は飲むのも打つのも嫌いだと云う性癖による。
 そんな所に行くのは迂闊で、今時したければ外国へひとっ飛び。それで回りにも体験者は幾らもいたから、やりたければ、ぶらっと出かけて持ち帰らなければ何の問題にもなりようがないのにな。
 まあ、そこまで理性的にさせないのがヤクのヤクたる所以か。近寄らないのが無難だね。

 

  最低のCM

 しかし。
 一度だけ覚醒剤にほんのちょっぴり興味を抱いたことがある。
 覚醒剤は、日本では今でもスピード等と名を変え、結構ポピュラーな薬だ。だからこそ、撲滅キャンペーンなんかの対象にもなった。僕が十代半ばの頃だ。
 ぼんやりテレビを眺めていたら、それが映った。たしかの一人のクローズアップが大写しにされ、ナレーションが被さる。
 「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」
 気分が悪くなった。世の中にはどうしてこうも「***やめるか、それとも人間やめるか、どっちか選べ」などという高圧的な物言いがはびこるのだろう。こういう類が立派だと信じている人々が多数派だからさ。あちらでも、こちらでも。
 その時ふと、覚醒剤でもやってやろうか、との思いが一瞬頭を掠め、すぐまたどこかへ消えた。
 それだけの話だ。
 そういう訳で、あれはMy最低のCMランキングNo.1を今も独走している。
 結局、僕は酒も煙草も嗜まないつまらない男になった。
 BGMはロックンロールを大音量で「マイ・ラヴそれはカントリー・パイ」と唄っている。

 

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