斜陽の甲子園
今春もぼんやり甲子園球場の全国高校野球大会を見ていましたが、ワンサイドゲームが多く、あまりおもしろくなかったですね。 一番おもしろいと評判のベスト8も、四試合中、三試合が一方的展開。第三試合は結果的に見れば接戦だけど、一時は9点も差があり、興味を持てる内容とは到底言えなかった。準決勝だけがわずかに救いだったけど、決勝はまた序盤で決着がほぼついてしまう。 ニュース番組での扱いもかつてほどではなく、もう野球ファンは日本のプロ野球とアメリカの大リーグに視線がいっているとの判断なのでしょうか。たしかに大会の売り言葉だった「懸命ひたむき」「地元代表」といったキャッチフレーズにも、すっかり手垢が付いてしまった。僕なんかはむしろそこだけが嫌だったのですが、それがなくなると、たんなる未熟で下手糞な若者達を写し出してるだけということになりかねない。この真っ昼間、ぼんやりアマ野球なんぞ見てるのは、俺だけではないかという気がしてくる。みんな「観る」ことへの感覚が研ぎすまされているんですね。 音楽への感覚も研ぎすまされてますよね。最近の歌手は本当に歌が上手い。逆に鈍くなっているのが、言葉への感覚のようで、スポーツの解説者も、音楽番組の司会者も言葉をあまり知らないらしく、また、視聴者も美しい発音や言葉遣いなど聞くより、美人もしくはお笑い芸人が喋ってる方が好い。だから、NHKの高校野球中継の名調子が、かえって時代から逸れて聞こえてしまいます。 町を歩いていても、最近は大会中だというのに、あの金属バットの快音がちっともテレビから漏れてきません。そのうち「昭和初期この国では神宮球場の東京六大学野球が、後期は甲子園球場の全国高校野球が人気だったが、平成になると、しだいにアマへの関心は薄れ、内外のプロに興味は移っていった」などと歴史書に書かれるのかもしれないな。そもそも、大リーグ人気をどの放送局より煽ってるのが、ほかならぬNHKですしね。もちろん、僕は六大学なんて気にしたことすらありません。そんなものです。 すると、かつてプロ野球が占めていた地位を大リーグに奪られてゆくのだとすれば、これからはプロ野球が高校野球化してゆくのでしょうか。そういえば、北海道の野球ファンを獲得しようと西武ライオンズと日本ハムファイターズが札幌ドーム主催試合の権利を奪い合ってると報じられて顰蹙をかってますが、あれもずっと「おらの地元代表」という興味で惹き付けていた甲子園大会の代わりをしようという、プロ側の戦略なのでしょうね。 一方、甲子園を本拠地にする阪神タイガースは、開幕後、快進撃です。今シーズンもしこの調子が最後まで続いて、来年以降も維持されるようだったら、いよいよ阪神ファン念願の「開幕試合を甲子園で」という希望が昂まってきて、不人気となってきた甲子園大会は終わる日が来るのではないか、そんなことをつらつら思ったりして。 どうせタイガースのこと、十月になったらBクラスにいるよ、という声も、なお根強いのでしょうがね。
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