あ・はるふ・まんすりー・こめんと 2002年4月17日

 
  蛇足ながら

 いま当トップページの「うぃくりい・わあくす」で短編小説を連載しているのですが、最初から解っていたことではあるものの、やっぱりよそに全文一挙掲載したものを手を加えずに少しずつ載せてゆくのは邪道でしたね。「ではまた来週」的な次回へ興味を繋ぐものが弱い。全文掲載ならなんとなく一気に読めるのですが、そういうわけにいかないし、それならちょっと手を入れて、それふうにすればいいものをそうしないから。
 サービス不足ですね。すいません。まもなく全文掲載になりますから。一週間ほどですが。
 謝りついでに、詩歌句の新詠をこんなに長期に渉り載せずにいることも御勘弁ください。小説は半ばに差し掛かったところなので、まだもう少し続きますが、気長にお待ちいただけたら嬉しい。

 

 
  先日の対談

三宅 : お会いできて光栄です。
詩人 : まだ生きてたのかい。
三宅 : 相変わらずですねえ。どうも業が深いらしくて、まだ成仏できません。
詩人 : 僕は君みたいに生きようとしない男は嫌いでね。
三宅 : 女ならいいんですか。
詩人 : 僕は男として女を生かしてやりたい。そして女に生かして欲しい。
三宅 : お幸せなことです。けど、「生かして欲しい」というのは「生きよう」としているのと対極ではないですか。
詩人 : 同じさ。そのうち君にもわかるよ。少なくとも今の君の年令では、俺は生きようとしていた。
三宅 : それは最初から生きてなかったからじゃないですか。
詩人 : なんだと。
三宅 : 生きてなかったから、「生きよう」と改心されたのじゃないですか。それに成功したんでしょう。
詩人 : 誰だって死にたくはないさ。ひょっとしたら、自分は死ぬかもしれないと切実に一度感じてみろ。人生が変わる。性格も大概変わる。そういう経験が大事なのさ。無ければ、かわいそうな奴だな。
三宅 : 僕は谷川俊太郎氏の詩が好きなんですけど、谷川氏があれほど「生きよう」という詩を書けるのは、最初から生きていなくて、本人は今は生きているつもりで、けど実際はちっとも生きていなくて、おそらく本当は一度も生きた経験が無い方だからなんじゃないかと思えるんですよ。普通、生きていれば、「生きよう」なんて思わないですから。
詩人 : 死が近付けば、そんなこと言ってられるか。それは君も例外じゃない。その時「生きたい」「生きよう」と思っても手後れもかもしれんぜ。
三宅 : 敵に囲まれた兵士が「生きよう」として、銃を手に突撃していくのを端(はた)で見てたら、「生きよう」としてるのか「死のう」としてるのか、区別がつかないでしょう。ぎりぎりのところで「生きよう」とする行動が「死のう」としているように見えたとしても、それは本人の責任じゃないです。「生きよう」とするのは、そういうことじゃないんですか。
詩人 : ばかげてる。そりゃ前の大戦の頃はそうだったのかもしれんさ。だが、俺ですらそんな体験はないぜ。残念ながら、今のこの国じゃそういう戦闘行為は存在しないんだ。
三宅 : でも、今の日本に「生きよう」としている人なんているんですか。みんな「生き延びよう」としている人ばかりに思えるんですが。
詩人 : それで善いのさ。リルケは「生き延びることだけがすべてだ」と言っている。
三宅 : 僕が読んだ翻訳では、その詩は「耐え忍ぶことがすべてなのだ」とあったのですが。
詩人 : 細かいことを気にする奴だな。意訳の範囲内だよ、それは。
三宅 : 僕にはそう思えないのですけどね。
詩人 : 絶えず死を身近に感じてる奴だっているんだよ。俺も最近感じるようになった。
三宅 : 幼い頃から感じてる者もいるでしょう。
詩人 : それは特殊な例だ。それこそ戦場で生まれなければ。
三宅 : 戦場で生まれた子供達、ですね。そういう子供にとっては生活の場が「戦場」なんですね。
詩人 : 「僕の町は戦場だった」というロシア映画を知ってるかい。まさにそういう話さ。あれは好い。
三宅 : 今の日本にもそういう「戦場」で生きている子供達は存在するように思うのですが。
詩人 : 妄想さ。漫画の世界だ。本当の戦場は全然違う。映画でかまわないから、本物を一度観ておけよ。本当に中東の紛争地帯まで出かけて、殺された後で恨まれても困るからな。
三宅 : でも、この国でも日々、殺されてる人は、絶えないのですけどね。逆に、よその国へ行った方が生き延びられそうな人もいるでしょう。
詩人 : わずかな例外をもとに全体を捉えようとすると、妙な結論を導くよ。
三宅 : 犠牲者は一人でも、それで多くの者が恐怖を感じれば、それは全体の問題だと思います。
詩人 : ああ、そうかい? そうなのかな。
三宅 : そうですよ。
詩人 : そうか。
三宅 : そうでしょう、きっと。
詩人 : たぶん。
三宅 : おそらく。

 

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