累積赤字
御存知でしょうが、この国には多くの文筆業者がいらっしゃるわけだけど、実際に文筆だけで生活できている人はわずかで、他は副業で(時にはこちらの方がはるかに多く)補っていたり、生活とは呼べないような暮らしをしていらっしゃる。 出版する本が統て数十万部いけば豪勢な身分だが、数万部じゃ毎年新刊を次々出さないかぎり、せいぜい部屋賃にしかならない。バブルの土地狂乱はとっくに納まったのに、都会は相も変わらず田舎の数倍が相場なもので。数万部ということは、数十万部の十分の一で、数百万部の百分の一(あたりまえだ)、それが収入に直接響くんだよ。 雑誌で名を売っているような人でも、実態は苦しいのだ。儲けている者と貧しい者との差が、最も甚だしい職種のひとつだものな。
僕なんかも毎日文筆と読書以外に何もしていないようなものだけど、当然それだけでは生きていけない。それで人から借りたり、奢ってもらったりしながら、 「いつか本が売れたら全部返すよ」 などと言っていたのだが、今日は気分が良いので、ふと一体いまどれほどそれが積み重なっているのか気になって数えてみた。 「愕然」とはこの時の為の言葉だろう。 家が建つぞ。 百万部のベストセラーを出しても精算できないとは知らなかった。三十万部なら三冊でも足りない。恐ろしい。雪だるま式とはこのことだ。日本の国家財政を彷彿とさせる。足りないから借りて、足りないから借りて、ついに返済不能な金額に至るんだ。 金融業者から借りていたら、とっくに殺されていた。いや、あいつら、そのうち本当に殺しに来るかもしれないな。その時は黙って殺させてやる方が良さそうだ。尋常じゃないぞ、これは。 と、判明したって何が変わるわけでもないんだがな。 とりあえず、そんなことを考えていたら、一首できた。めでたいことだ。
そうか?
死ぬのなら借金を全部返済してから死にたいと言った詩人を思い出すよ。そいつは結局、一円も返さず、早逝してしまったが。 僕が死んだら、貸した奴等はこちらの血縁者の処に押し掛けるだろう。そして、どこからもけんもほろろに追い返されるだろう。哀しいな。 僕が哀しんでもしょうがないんだが。 とりあえず、早く新刊が出て、売れることを祈ろう。総ての人達の為に。
さて、調子に乗って言葉が滑るままに任せてきたけど、この項、何処までがノンフィクションなのでしょうねえ。
信憑性、ありすぎ?
|