千曲川あるいは中麻奈
信州をうろうろしてきました。千曲川は綺麗ですね。
信濃なる千曲の川のさざれ石も君し踏みてば玉と拾はむ
万葉集3400番。これは秀歌です。 川底の石を踏んだ「君」は、もちろん裸足だったのでしょうね。その足裏(あなうら)に触れた小石を抱き締める。美しい恋の歌です。 一歩まちがえたら、谷崎潤一郎の世界に突っ込んでしまいそうだけど。踏まれる快感。おっとっと。そこまでいかなくても佳いですよね。
関係ないですが、最近、あちこちの寺社で「これが『君が代』に出てくる"さざれ石"だ」という某県出土の岩塊が飾ってありますけど、それじゃあ千曲川のさざれ石が可哀想ではないかなどと思ったりして。千曲川にあっても、さざれ石は、立派なさざれ石です。 あれもさざれ石、これもさざれ石。本当にあれがその石だったら、有り難みも何もありませんね。
ところで、万葉ではこの歌の次の3401番に「中麻奈」という意味不明の言葉が出てきて、多くの本では「ナカマナ」と読んでるのですけど、歌人の故・斉藤史が、これは地元の訛りで「チョウマノ」と読み、これも千曲川のことだ、という説を引いてましたが、千曲川を「チョウマガワ」と発音するような人には会えませんでした。もう、そんな発音はもっと奥の地元民同士でしか話されないのでしょう。 残念です。
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